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邦銀は1988年のBIS規制で自己資本の弱さをつかれ、不利な規制を飲まされた。
その後、金融機関も金融監督当局もBIS規制が求めていた銀行の自己資本の増強に本格的に取り組まず、周囲遅れに陥った。 金融危機は、初年ぶりに訪れた国際規制を見直す場でもあった。
しかも日本の金融機関は欧米に比べ危機の直接の影響が軽く、周囲遅れを取り戻す好機だった。 しかし金融庁は新しい金融秩序作りを主導できず、自己資本の薄い日本のメガバンクは再び資本の弱さをつかれ苦しい立場に追い込まれようとしている。
日本は今、危機に直撃された欧米以上に金融のあり方を問われている。 新しい金融秩序の中で国家としての金融戦略をどう構築するのか。

新しい金融秩序の作成過程を検証した本書が、ヒントになれば幸いである。 米国で起きたサブプライムローン問題は、100年に一度といわれる世界経済の危機につながった。
サブプライムローンは、米国の信用力の低い個人向け住宅融資で、規模も1兆ドル程度と、世界経済から見ればほんの一部にすぎない。 そこで起きた融資の焦げ付きというポカが、なぜ母屋である米国経済に燃え広がり、それが世界を揺るがしたのか。
実はサブプライムローン問題は端緒にすぎなかった。 住宅価格は下げ止まらず、焦げ付きは優良住宅ローン(プライムローン)にも広がっていく。
米国で起きたのは、住宅バブルとそれに支えられた信用バブル「借金漬け経済」の崩壊だった。 住宅が火をつけたマネー膨張2007年、日米欧は景気拡大に浮かれていた。
○○年の世界経済の成長率は5・4%と第二次世界大戦以降で最も高く、○○年も5・2%の高成長が続いていた。 欧米に加えて、ブラジル、ロシア、中国、インドなどの、BRICSと称される新興国経済が力強く拡大し始めた。
その陰でほころびも広がっていた。 住宅価格がカリフォルニア州のロサンゼルスで○○年9月に、フロリダ州のマイアミで○○年○月に下がり始めた。
これが恐慌後、最悪といわれる金融危機の発端だった。 米国の住宅価格は1980年以降、ほぼ一貫して上がった。
100としたときの全米の住宅価格指数は、ピークの○○年第2四半期で409と、4倍を超えた。 州別に見るとカリフォルニアでは6・3倍、マサチューセッツでは7・2倍にもなった。

とりわけ2000年以降の上昇は異常だった。 米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB) のG議長が取った低金利政策や、移民の増加による住宅需要の拡大などを受けて、全米の住宅価格の上昇率が○○%を超える年もあった。
日本の初年代末の土地バブルをも凌ぐ、巨大な住宅バブルだった。 住宅バブルは金融の膨張をもたらした。
融資など伝統的な金融では、住宅は最有力の担保になる。 米国民は担保価値が高騰したため、借金をしやすくなった。
その典型が、ホームエクイティ・ローンと呼ばれる融資だった。 住宅価格が上がると、住宅所有者の保有資産の価値が上がる。
銀行はその保有資産の価値の増加分を担保に、さらに資金を貸し付ける仕組みだった。 住宅所有者はその借金で家具や自動車を購入し、消費が拡大、それが景気を拡大させ、一段と住宅価格を押し上げる循環が起きた。
新しい「証券化」と呼ばれる金融技術も、金融の膨張に拍車をかけた。 不動産や住宅ローンを集めて、それを担保に有価証券を発行し、投資家に売る仕組みである。
担保については、不動産や住宅ローンを集めることでリスクを分散する。 その担保価値が上がったため、証券化商品の価格も上がり、投資家から見ると魅力的な金融商品に映った。
この仕組みでは、担保のリスクを幅広い投資家が小口分散して持つことになるので、リスクの分散ができた。 これまで融資リスクを一手に負担してきた銀行に頼る代わりに、投資家が幅広くかかわる新しいファイナンスが定着し、こうした証券化は、前年には米国の金融の3割近くを担った。

銀行は伝統的な融資をすれば、主要国の監督当局で構成する銀行監督委員会(パーセルI員会)の自己資本比率規制(通称BIS規制)で、融資のリスク量の8%の自己資本を積むよう求められる。 ところが、その融資を証券化によって投資家が小口有価証券を買う形に組み替えると簿外扱いになり、銀行はその分の自己資本がいらなくなる。
銀行は証券化で浮いた自己資本をほかの融資や自己勘定での有価証券投資に振り向けた。 銀行は、証券化を、貸し出し拡大の魔法の杖として使うようになった。
こうした要因もあって、米銀の信用供与(融資と投資の合計)は拡大を続ける。 残高は1998年末の3兆2800億ドルから○○年末には7兆1700億ドルと、○○年でおよそ2・2倍になった。
また不動産など資産を担保にした証券化は、資産の保有者に新しい資金調達手段を提供した。 担保になる資産があれば銀行融資に頼らなくても資金調達できる、従来とは異なる信用創造の手法だった。
銀行を中心とした金融システムの外に、新たな金融システムが誕生し急拡大した。 銀行から融資を受けられない企業も、資産を利用して借り入れを増やした。
そして経済は借金漬けになった。 米国の全部門の債務残高は、○○年末から○○年末までの5年間に○○%も増えた。
内訳を見ると、家計の債務は○○%増、企業の債務は○○%増、国内金融部門の債務は○○%増となっている。 FRBによると、米国の信用借入残高は、1980年ごろまでは国内総生産(GDP)の1・5倍程度だったが、その比率は上昇を続けた。
特に2000年代になってからは上昇が加速し、○○年には借り入れ規模がGDPの3・5倍を上回っている。 企業の利益も、2000年以降は金融が製造業を上回った。
米国の繁栄は、実体経済に比べて異様に膨れ上がったマネー経済が支えていたが、その実態は住宅をテコに膨れ上がったバブルにほかならなかった。 揺れる1000兆円市場 サブプライムローン問題の真相バブルの崩壊は、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)から始まった。

米国で普通の所得水準の世帯が借りる住宅融資は、優良融資(プライムローン)と呼ばれる。 ところが2000年以降、通常であれば住宅融資を受けて住宅が購入できない層向けのローンが増えていった。
背景にあったのは、ブッシュ政権の低所得者に対する持ち家推進策だった。 米国では高額所得者への減税などで、貧富の格差が広がっていた。
移民などの低所得者層の不満を和らげる目的で、そうした層が融資を受けて住宅を購入することを促した。 つまり、アメリカンドリームを持たせようとしたのだ。
金融機関が政府の政策に乗って、サブプライムローンに力を入れた。 しかし、本来なら金融機関が貸し出しを断るような層への貸し出しだけに、そこにはトリックがあった。
まず、借りた当初から返済が行き詰まらないように、最初の2、3年の利払いを低く抑えた。 利払いができなくなっても、住宅価格が上がっていれば追加融資をして利払いを続けさせた。
いよいよ利払いに窮すれば、その住宅を売らせることを想定していた。 住宅価格は上がりつづけており、金融機関に大きな焦げ付きが発生するとは考えていなかった。
ところが○○年半ばから、カリフォルニア州など、上昇の激しかった地域で住宅価格が下がり始めた。

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